原発事故被災者手記
ぽて人の郡山便り

この状態を何と呼べば良いのだろうか。私には「ファシズム」という言葉以外思いつかない

2011/12/29

4.原発賛美歌『I love you & I need you ふくしま』by 猪苗代湖ズ

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原子炉の冷却機能停止のニュースを聞いたのは3月11日夜、避難所のテレビからだったと記憶しております。冷却機能停止→炉心メルトダウン→水蒸気爆発→プルトニウムの大量拡散という因果律は広瀬隆さんの本から学んでおりすぐに想定することができました。

余震やらテレビの放送やらで眠れない夜を過ごし、翌朝6時くらいに起き出して、まだ足を踏み入れていなかった部屋へ戻ったところ、まあ、割れた食器や本などがめちゃくちゃに散乱し土足でしか部屋には入れませんでした。

私の住んでいた地域では幸いなことに停電は免れていました。吹っ飛んでいたモデムの電源をつなぐといつものようにランプが点灯しました。パソコンは生きていました。すぐに妻と相談し原発が爆発する恐れがあるので北海道へ避難することを決め、パソコンで翌13日朝一便の飛行機を予約しました。一号機が水素爆発を起こしたのはその日の夕刻でした。水蒸気爆発では無かったことは、はたして不幸中の幸いだったのでしょうか?

郡山市に戻ったのは4月3日でした。帰りの飛行機には子供さん連れのご家族で一杯でした。これは後で知ったのですが、学校が始まると言うことでせっかく避難していた子どもたちが戻ってきていたのでした。

札幌でのテレビ放送はかなり通常モードになっていましたが、郡山では画面の枠外に放射線量や緊急対応の内容、役所の連絡先などがずっと流れていてまだ緊迫感がありましたが、枠外の情報とは裏腹に放送内容は驚くべきものでした。特に酷かったのはNHK福島です。元NHKのキャスター、科学ジャーナリストを僭称する小出五郎なる御用評論家が毎日何度も「年間100ミリシーベルト未満は安心です」と説教していたのです。Mr.100ミリシーベルトの誉れも高い山下俊一は講演会で話していましたが、NHK福島の放送はより影響力が大きいということでその罪責は山下俊一を凌駕しているといえます。学校の始まりに合わせて周到に洗脳放送を続けているとしか思えませんでした。

そして民放ではまともなコマーシャルは無く、相変わらずACが広告を垂れ流していたのですが、このコマーシャルに猪苗代湖ズの『I love you & I need you ふくしま』がこれも、辟易するほど何度も何度も流れていたのです。「ふくしまのために歌いたいんだ。いいだろ?」という、阿るような言い訳じみたセリフの後に歌われる、薄汚い中年男どもの異様に甘ったるい声と、福島を汚された怒りも悲しみも無く、ただただ「ふくしまがすき~♪」と歌う全く内容の無い空疎な歌詞に反吐が出そうで、こいつらが出る度にチャンネルを変えるか、スイッチを切るかしていました。私の交友関係は相当に偏っているらしく、こんな曲、馬鹿にする人以外見たこと無いですね。

この猪苗代湖ズについて書くために初めて奴らのHPを見て、心の底からせせら笑ってしまったね。なんとこの曲2010年の9月に作った曲の二番煎じ焼き直しなのです。どーりで。3.11の大震災と原発大爆発という事態に、福島の地を思いっきり汚され、汚辱にまみれた土地に貶められたというのに、それに対する怒りも、悲しみも、作品に昇華する創造力は皆無のくせに、マーケッターとしての能力はずば抜けていたのですな。そして、こいつら、とっとと東京からもずらかって名古屋で録音して、その言い訳が「節電に最大限配慮して」だって。

おまけに、「利益の全額を・・・寄付します」だって。「収益」ではなくて「利益」。会社勤めした人ならわかりますよね。収益から経費を差し引いたのが利益。さぞかし、人件費や交際費は極力抑えたんでしょうな。え?

結局、こいつらの歌は、公権力による分断と疎外、排除と差別を「絆」というおためごかしで糊塗することに大いに役立つ、黙示の原発賛美歌でしかなかったわけです。

そして、その御褒美に、広報洗脳放送局NHKと猪苗代湖ズは同衾野合を果たし、めでたくも、紅白歌合戦に猪苗代湖ズが出演しました。酷い年の年末に最後っ屁をかましたということです。一生懸命努力して出場を果たした歌手の方々はいい面の皮ですね。

One day in a nuclear age
They may understand our rage
They build machines that they can't control
And bury the waste in a great big hole
核時代のある日、奴らは俺たちの激しい怒りを思い知るだろう
奴らは制御不能な装置を建設し、巨大な穴を掘って廃棄物を捨てている
We work the black seam 」 by Sting

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